My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

「さて、この男どうしたものか」

 だがセリーンが男を見下ろし言うのを聞いてすぐに顔を引き締めた。

「目を覚ます前に縛っておいたほうがいいだろう」
「いや、それが、どうも事情があるようでな」
「は?」

 ラグが眉を寄せ低い声を出した。

「この男、部屋に入るなり私に頼みがあると拘束を解いてくれてな」

 そういえばセリーンの手首にもロープがない。

「どういうこと……?」
「だがその後すぐにブゥが飛び出てきてな、詳しく話を聞く前に伸びてしまったんだ」

 私はもう一度海賊の頭グリスノートを見下ろす。
 その無防備な寝顔だけ見れば、同い年くらいの普通の男の子に見えるのに……。

「なんにしろ、危ねぇ奴なのは確かだろ。縛るぞ」
「そうだな」

 セリーンも今度はあっさりと頷いた。
 ラグはグリスノートをごろりと転がし先ほどの私たちのように後ろ手にロープで縛り上げた。

「その男、相当なマニアだな」
「え?」

 その声に振り返ると、セリーンが本棚を見つめていた。

「ここにある書物、全てセイレーンや歌に関するもののようだ」
「え!?」
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