My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

「大分良くなりました。ありがとうございます」

 そう笑顔で答えるとおじさんも、にかっと笑ってくれた。

「そりゃあ良かった! 俺も船乗りになりたての頃はよく吐いたもんだ。船乗りってのはそうやって強くなる。――ほれ、あいつを見てみろ」

 指さされた先に視線をやると、乗組員の帽子を被ったまだ若そうな男の子が一人カウンター席に突っ伏していた。

「新人なんだがあいつも初日からあの調子で使い物になりゃしねぇ。だがまぁこの航海が終わる頃にはちったぁマシになってるだろう」

 ぴくりとも動かないその人を見ながら大変だなぁと同情しているとおじさんの視線が戻って来た。

「だから嬢ちゃんもどんどん吐いてりゃそのうち強くなるさ」
「あはは……」

 苦笑しているとセリーンがその男を睨みつけた。

「これから食事をとるってときにそういった話は止めてくれないか」
「おっと、綺麗なねーちゃんに怒られちまった。やぁすまんすまん、嬢ちゃん許してくれ」
「い、いえ」
「まぁ残り3、4日の辛抱だ。このまま海が荒れないよう祈っててくれ」

 私がはいと返事をするとおじさんは手を振って仲間たちの座るテーブルヘと戻って行った。
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