My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
8.脱出
海賊のアジトにエルネストさんの手掛かりがあるかもしれないと期待していたけれど、まさかその手前でこんな形で彼の名を目にするなんて……。
興奮を覚えながらその短い文字列を目に焼き付けているとすぐ隣で低い声。
「この場所に名前を書くってのは、どういう意味がある?」
「普通は作曲者……この曲を作った人って意味なんだけど」
「偶然、にしちゃ出来すぎだな」
エルネストさんが作曲……? 考えたこともなかったけれど、妙にしっくりと来た。
作曲だけじゃなくて、この歌詞もエルネストさんが書いたものかもしれない。だとしたら――。
「どうしよう、この人起こして訊く?」
振り向いてうつ伏せに伸びているグリスノートを見下ろす。
ラグも彼を振り返り考え込むように眉を寄せた。
「おい、向こうに灯りが見えるぞ。あれがアジトなんじゃないか?」
見ればセリーンが窓を覗きこんでいた。