My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「アジトでなくとも陸が近いのは確かだ。あそこまで貴様の術で飛べないか?」
ラグが舌打ちをしてそんな彼女に言う。
「お前、まだその長とやらに会う気か? そいつもこいつのようなゲス野郎かもしれねぇぞ」
するとセリーンはグリスノートに視線を向けた。
「その男に中継ぎを頼むのは難しくなってしまったからな。それでもどうにかして話をしたいが」
と、その視線が私に移った。
「カノンが心配だな」
「え?」
「無論私が全力で守るが、先ほどのようなことがまた無いとは限らん。アジトというからにはムサイ男共の巣窟だろうからな」
ムサイ男共の巣窟……想像してごくりと喉が鳴った。
「――で、でもここにこんな本があったんだし、アジトに行けばもっとエルネストさんに近づけるような気がするし」
確かに先ほどのようなことがあったら怖い。でもここで引いたら彼がまた遠退いてしまう気がした。
(私がもっと強かったら……)