My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「頭ぁー!!」
「くそ、開かねぇっ!」
「蹴破れ!」
先ほど倒した海賊たちが仲間を引きつれてやって来たようだ。
(まずいっ!)
「うぅ……」
そんな子分たちの声に反応したのか、グリスノートが小さく呻き微かに身じろぎして更に焦る。
ラグが面倒そうに舌打ちをした。
「一先ずこの船から出るぞ」
頷いて持っていた本を棚に仕舞おうとして、ひょいとラグに取り上げられた。
「え?」
そしてそのまま押し付けられて驚く。
「しっかり持ってろ。落とすなよ」
「えっ」
――持ってくってこと!?
確かに大事な手掛かりだけれど、きっとこの海賊にとって大切な本だろう。
「ブゥ! 行くぞ!」
だがラグはすでに私から視線を外していた。