My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
すぐ近くの階段を駆け上がり扉を開けるとそこは甲板だった。強い潮風が全身に吹きつけやっと外に出られたのだと嬉しくなる。
空にはぼんやりと月が出ていた。そしてその下、海の向こうに確かにいくつもの灯りが見えた。本当に陸が近いのだ。
「飛ぶぞ。手ェ貸せ。……うるせぇから文句言うなよ」
「あの子に会えるのなら!」
セリーンが喜々として答えながらラグの手を取り、彼は一瞬げんなりとした顔をしてから苦笑する私の手を強く握った。
ブゥがポケットに入るのを確認してからラグは優しげな声で風に話しかけた。
「すまない。少し力を貸してくれ」
借りた本を海に落としてしまわぬよう、片方の腕でしっかりと抱きしめる。そして。