My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「風を此処に……!」
ラグに手を引かれ私たちは夜空に飛び上った。
途中見張り台にいた男が何か怒鳴っていたようだが、風音のせいでよく聞こえなかった。
向かう先、点々と散らばる灯りの背後には壁のような高い岩山がそびえていた。――島、だろうか。
「街のようだな。アジトではなさそうだが」
そんなセリーンの声が聞こえて再び視線を灯りの方に落とす。ぐんぐん近づいてくるそれは確かに街の灯りのようでほっとする。
なんにしても、やっと何日かぶりに地面に立てるのだ。今はそれが一番嬉しかった。
「街の外れに下りるぞ」
「あぁ!」
嬉しそうなセリーンの返答に風音に紛れ舌打ちが聞こえた気がした。