My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「全くこれだから……」
セリーンがぶつぶつ文句を言っているとウエイターのお兄さんがやって来てパンとスープを手際よくテーブルに並べていった。頼まずともメニューは決まっているようだ。
見るからに硬そうなパンだけれどスープに浸して食べればきっとお腹にも優しいだろう。
私はいただきますと言って早速千切ったパンをスープに少しの間付けてから口に入れようとした、そのときだった。
「銀のセイレーン!?」
「!?」
耳に入ってきたその大きな声にぎくりとして、スープの中にパンを落としてしまった。
ラグとセリーンの鋭い視線が一瞬私の背後を見つめたが、すぐに二人とも何事も無かったように食事を再開した。……私のことがバレたわけではなさそうだ。
だから大丈夫、落ち着けと自分に言い聞かせ、それでも息を潜め私はその会話に耳を傾けた。