My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
9.岩山と海に囲まれた街
「どうかな! 男に見える?」
岩陰でセリーンが見立ててくれた服装に着替えた私はふたりと一匹の前で仁王立ちになった。
男物のシャツとハーフパンツ、長い髪は帽子で隠し、念のためにと眼鏡もかけた。グリスノートから拝借した小物の中に伊達眼鏡がちゃんとあったのだ。
ブゥを頭に乗せたラグが大きな溜息を吐き、その横でセリーンがうんうんと頷く。
「いいんじゃないか。あとは立ち振る舞いと、喋り方だな」
「あ、そうだよね。じゃない、そうだよな! 頑張るぜ!」
出来る限りの低い声でびしっと親指を立てると、ラグが二度目の長い溜息を吐いた。
そういうラグはというと、セリーンのリクエストを全て突っぱねて結局いつも結んでいる髪を下ろしただけ。セリーンがその髪をツインテールにしようとして怒られる場面もあったりしたが、小さな姿でいることは渋々受け入れることにしたみたいだ。