My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
ちなみにセリーンも男装を試みたのだがグリスノートの服ではどれも無理があり(胸的に)男装は諦め目立つ赤毛をバンダナを巻いて隠すだけにしていた。
と、そんな彼女が私たちに言った。
「設定を考えてみた」
「設定?」
首を傾げた私と怪訝な顏をしたラグを指差しセリーンは続ける。
「お前たちは兄弟」
「兄弟!?」
「兄弟!?」
私たちが揃って大声を上げ、驚いたブゥがラグの頭から飛び上がった。
「そして私はお前たち兄弟に雇われた傭兵だ。お前たちは誤って船から落ち、助けようとした私と共にこの近くに流れ着いた。どうだ、無理のない設定だろう」
得意気に言うセリーン。確かに無理はないけれど……。
「じゃあ、私がお兄ちゃんだね」
ラグを見下ろし、にーっと笑うと彼はものすごく嫌そうな顔をした。
「ここがどんな街かわからないからな。念には念をだ」
セリーンの真剣な声音に、私は顔を引き締め頷いた。
こうして私たちは岩山と海に挟まれたその街に足を踏み入れたのだった。