My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
窓から漏れるほのかな灯りと陽気な話し声。家々の並びから少し離れた場所にあるそこはどうやら酒場のようだった。
石造りの建物の脇にはたくさんの酒樽が積まれ、外まで漂ってくる良い香りに思わずごくりと喉が鳴る。
セリーンは辺りを見回すと正面入口ではなく酒樽の置かれた窓の方へと回り私たちを手招きした。
意図を察した私たちは彼女に続いてそちらに回り店内の会話に耳を澄ました。
「――なんだかんだ言ってよ、結局手放したくないんだって」
「そんなのお互いわかってんだろ。それでもってんだから相当なもんだ」
「気持ちはわからないでもないけどなぁ」
「で、今回はどうだと思う」
「今回も俺は来ない方に賭けるぜ」
「俺もだ」
「俺もー!」
「おいおい、それじゃ賭けにならねぇじゃねえかよ!」
どっと沸く店内。だがその直後だ。
「ちょっとアンタたち!」
男たちの笑い声を甲高い怒声がかき消して驚く。若い女性の声だ。