My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
中にいたのは7人ほどの男性客と、そして今声を掛けてきたエプロン姿の女の子。おそらくは彼女が先ほど「リディアンちゃん」と呼ばれていた怒声の主だろう。同じ歳くらいの可愛らしい女の子だ。
彼女もテーブル席に座る男たちも皆不審そうに私たちを見つめた。
「いらっしゃいませ」
その声に視線を向けるとカウンター奥で主人らしき上品な髭の男がやはり怪訝な顏でこちらを見ていた。
「すまない、ここはなんという街だ?」
セリーンがそう訊ねながら足早にカウンターへと向かうと主人は手にしていたグラスを置いて口を開いた。
「あなた方は? 見ない顔だが」
「私はセリーン。この子達に雇われた傭兵だ。実は船から落ちてな、やっとの思いでここに辿り着いたんだ」
すると主人は驚いた様子で後ろの私たちを見た。
「それは大変でしたね。ここはイディル。小さな港町ですよ」
「イディル……」
セリーンはやはりぴんと来ないようだった。