My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「ここにギルドはないか?」
「残念ながら、この町にギルドはないのですよ」
申し訳なさそうに主人は答える。すると背後の客たちからも声が掛かった。
「そうそう、ここにはギルドもカジノも宿もねぇぞ! 店はここくらいなもんだ」
「なんせちっぽけな町だからなぁ」
「だがここの料理と酒は美味い! それに看板娘が可愛いっ!」
「違いねぇ!」
赤ら顔の男たちはそこでまたどっと笑い出した。
宿がないと聞いて内心がっかりしていると主人が苦笑しながら言った。
「良かったら、何かお作りしましょうか?」
「ああ、有難い。皆空腹でな」
セリーンがこちらを振り向き、私もお腹を擦りながらできる限りの低い声で答えた。
「お願いします!」
すると主人はにこやかに笑ってくれた。