My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

 ラグの問いにまた一瞬リディアンちゃんの笑顔が強張ったような気がした。それを隠すように彼女は私たちに背を向け荷物を持ってキッチンの方へ向かった。

「さぁ。私は知らないけど、なんで?」
「海賊船がこの町に向かっていたように見えた」
「海賊船が? ……ああ、貴方たち海賊に襲われたって言ってたわね」
「そのときに大事なものを盗られたんだ」

 そう続けたのはやはり真剣な表情のセリーンだった。おそらくはハッタリ。

(寧ろ海賊から物を盗んだのはこっちの方だし……)

 私たちが今身に着けているものも、荷物の中に忍ばせている本もあのグリスノートのものだ。

「大事なものを?」

 リディアンちゃんはキッチンから顔を覗かせた。

「ああ。だからアジトに乗り込んででも取り返したくてな」
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