My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
セリーンが言うと、リディアンちゃんは困ったように首を振った。
「そうだったの……。でもごめんなさい、海賊のアジトなんて本当に聞いたことないわ」
「そうか……」
セリーンが息を吐き、私もそれに合わせて小さく肩を落とす。
と、リディアンちゃんはそんな空気を変えるように明るい声で言った。
「貴方たち、サエタ港に向かっていたって言ってたわよね。明日、知り合いの船乗りにサエタ港まで船を出せないか訊いてみるわ」
「それは、有り難いが……」
そして彼女は気遣わしげな笑みを浮かべ続けた。
「折角助かった命なんだから、海賊のことは諦めたほうがいいと思う。盗られたものは、残念だけれど……」
私たちが顔を見合わせていると、彼女はパンっと軽く手を叩き再びにっこりと笑った。
「一先ず、今日はゆっくり休んで! 明日また話しましょ?」
「そう、だな。そうさせてもらおう」
セリーンも笑顔を見せた。