短編小説集 (恋愛)
窓の外の君と
「…ん。大好きだよ…」
…人?
私はいつも昼休みに屋上に来る。
…誰?
「にゃああ」
え?猫?
てか、この声…
「うん、可愛いねどうしたの?」
あれ? この声…
「あ」
思わず声を出してしまった。
「え?」
この人、知ってる。
…私の好きな人。
「ああ、君、どうしたの? 窓から屋上見てたらここにこの猫がいて…いつもいる君もいないし…。気になって、来ちゃった☆」
「えへへ」と言わんばかりに言う彼はこの猫を見て私に「知り合い?」と聞いた。
「あ…うん。その子…うちの子…」
「え?」
私は基本的に人と話すのは苦手だ。
特に男の子は。
でも。
なんでだろう。
彼にだけは男の子に必ず感じる嫌悪感を、感じないのは。
…私がこの人のことを好きだから?
「あ、うちの子って…自分の家の猫ってこと?」
「あ…うん」
相変わらず話すのは苦手。
もうちょっと、自分から話したりとか…
出来たらいいのに。
「好き」って言いたい。
痴漢に遭っていた時に助けてもらって、その時からずっと好きなのに…。
お礼すら言えてない。
冷たい人って思われてるかも…。
「僕、2組の山崎です。前、電車で会ったよね?」
その通りです。
「あっあのっ」
お礼を言わせて!
「あの時はありがとう…えと…あの…痴漢に遭ってた時……」
やばい、しどろもどろすぎる。
意味、わかってくれるかな?
「えと…」
分かるわけないだろう。説明を試みるも上手く言えない。
「ああ、うん。大丈夫。あの人いつも屋上にいる人だって思ったら…あれ? よく見たら痴漢されてる?ってなってさ」
「たまたまだから気にしないで」と続ける彼は今まで会ったどんな男の子よりも優しい。
「あっ…ありがとう…」
感謝の意を込めて言ったその声は消え入りそうなほど小さい声だったが彼は聞き逃すことなく、「うん」と笑顔で応えてくれた。
「…………」
彼はいきなり黙り込んでしまった。
なんだろう。