俺がしあわせにします
少しの間をおいて、椎名さんが喋った。

「コラ、いつもみたいに「わたしの大事な右腕なんだから、あんたなんかに渡さない!」って言えよ。調子狂うだろ」

そう!そうです、和奏さん!

「中にはね、本気の子もいるの」

・・・知ってたんだ和奏さん。

そりゃ堂々と公表してる訳じゃないけどさ、見てれば、わかるか・・・。

今まで意識してなかったけど、和奏さんには知られたくなかった自分に気づいた。

俺は聞き耳を立てていたが、気分は落ち込んできていた。

「その子がね、海に誘ってたの、倉科くんを。あ、みんなで遊ぼうって話なんだけどね」

和奏さん、やっぱり聞いてたんだ、あの時の彼女とのやりとり。

あのときの避けるように俺から離れた姿が脳裏に蘇った。


「うん」

椎名さんは相槌を打って先を促した。

「倉科くんね、はっきりと断ったの。『好きな人に告白したからもう行かない』って」

「へぇ、そんなこと言ったんだ。あいつ」

なんだか椎名さんの声音は少し嬉しそうに聞こえた。

「うん、わたしすごく嬉しかったの」

え?嬉しかった?
じゃあ、あの態度はなに?

「やっぱ好きなんじゃん」

今度は少し呆れた色を乗せた。
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