俺がしあわせにします
知りたい気持ちがないといったら嘘になる。でも知りたくない気持ちもある。

そんなことをアタマの中でぐるぐる考えていると、カチャとドアが開いた。

そして現れたのは、和奏さんだった。

「倉科くん、まだ残ってたの?もしかして何かあった?!」

誰もいないと思って入った部屋に誰か居たんだから、そりゃびっくりするよね。

和奏さんは驚いて、俺に問いかけた。

「おつかれさまです。いえ、大丈夫です」

俺は和奏さんが心配しないように笑顔で返した。

和奏さんは腑に落ちないカオで納得した。

「そう。だったらいいけど」

じゃあ、なんで倉科くんはこんな時間まで残ってるの?って疑問が声に乗っていた。

本日のタスクを片付けるべく、和奏さんはデスクに着く。机に目線を落としたのを確認して、俺は話しかけた。

「その資料、先程椎名さんがいらして。よろしくって置いていかれました」

和奏さんは机の上の資料から俺に視線を移した。

「そう、了解。対応ありがとう」

「どういたしまして」

和奏さんは俺から資料に視線を戻した。

真剣に資料を見ている。
仕事モードの彼女だ。
話しかけづらくなっちゃったけど、俺は意を決して、声をかけた。

「あのっ、和奏さん、15分、いえ10分、なんなら5分でも構わないので、俺に和奏さんの時間くれませんか?」
< 146 / 195 >

この作品をシェア

pagetop