俺がしあわせにします
お酒が少しだけ回ってきたころ、それまでの仕事の話題を椎名さんが遮った。

俺の目を見つめて、にやけてる。

「なんですか?そんな色っぽい目で見つめられたって、俺オトコだし、何にも出ませんよ」

「色っぽい?そう?」

この人も気づいてないのか?

「いや、いつになったら本題話すのかなって思ってさ」

前言撤回!
やはり椎名さんは侮れないヒトだ。

「え?本題って」

「本題だよ、おまえが俺を食事に誘った意味、いつ話すの?てか、宮原の何が聞きたいの?」

え?この人はエスパーか?
なんで?俺、和奏さんなんて一言も言ってないのに。

俺が驚いているのは表情にダダ漏れで。

「そんな驚くことないだろ。俺とおまえの接点考えたら、あいつしかないんだから」


そっか、そうだよな。よく考えなくても確かにそうだ。

「それに、好きなんだろ、宮原のこと」

俺の持っていたフォークが手から滑り落ちた。

「あぁ、何やってんだよ」

落ちたフォークを椎名さんが拾い上げる。

「すみません!あの」

椎名さんが、テーブルに置いてあったカゴから、新しいフォークを出して渡してくれた。

気がきくっていうか、スマートだな。ほんとに。

「もっとクールで、いろんなことうまくかわせるタイプだと思ってたけど、図星つかれて動揺したり、俺を食事に誘って情報収集なんて、意外とかわいいとこあるんだな、おまえ」

またしても笑顔で見つめられた。

この人も俺のこと、半分からかうつもりだ。
そうはいかない。

「かわいいとか言っても驚きませんよ。俺、言われ慣れてるんで(二人限定だけど)」

ペースに乗せられないように、冷静に返した。

「へぇ、そうなんだ〜!宮原も思ってるかもね」

なぜかウキウキした感じで椎名さんが言う。

「思ってませんよ。俺和奏さんの前ではカッコつけてますから」

「あははは!カッコつけてるって!自分で言わないだろ」

椎名さんが面白すぎる!っと言わんばかりに笑う。

「おまえやっぱすげーかわいいな。カッコつけてるんだ?へぇ、そうかあ。ふーん」

まるで予想外にいいことを聞いたときの子どものように、ソワソワ目をキラキラさせている。

「いいなあ、やっぱ若いって」

って空中を見つめて、浸っている。

あーもう、なんだよこの展開!

もっとさりげなく聞くつもりだったのに、あんなこというから、俺の気持ちがはっきりバレちゃったじゃんか!

もうこうなったら、単刀直入に聞いてやる。
俺の気持ちを知ったいま、椎名さんだって無下にはしないはずだ!

俺は居住まいを正して、真剣なカオで、椎名さんに話し出した。

「和奏さんの付き合ってる人って誰なんですか?社内の人ですよね?」

椎名さんの動きが止まった。
< 16 / 195 >

この作品をシェア

pagetop