俺がしあわせにします
一応どんな話でも受け止めようと覚悟してきたつもりだけど、今夜は諦めて立ち上がろうとしたときだった。

「待って!ごめんね、でも待って」

和奏さんが俺の手を掴んでいる。

「和奏さん?無理しなくていいですよ。今夜じゃなくても。俺待てますから」

俺は掴んでいる和奏さんの手を外そうとしたが、和奏さんは、手を離そうとしない。

「だめなの。だから、今から伝えるから」

俺は和奏さんが今夜俺に伝えようとしてることよりも、俺の手をさらに強く掴む彼女の手にドキドキした。

こんなの一緒にいて、初めてなんだ。
どんなに隣にいたって、俺は彼女と手を繋いだことはもちろん、触れたことすら無いに等しいことに気づいた。

「あのときの質問の答えを伝えたいの。倉科くんにちゃんと伝えたいの」

え?

手に集中していた意識が、アタマに戻ってきた。

「あの時って」

『俺のこと、好きですか?』

その答え?あの時は言いたくなかったけど、今は言えるってこと?

それって俺が聞きたい、何ものにもとらわれない、ほんとにほんとの和奏さんの気持ち?
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