俺がしあわせにします
「違うわ、私たちの関係に奥さまが気づいたことと、倉科くんがわたしに言ったことは、繋がらない。でも、わたしは、倉科くんの後じゃなきゃダメだったの」

「どういう意味ですか?」

和奏さんの言いたいことがわからなかった。

「もし、倉科くんに言われてないで、あの日奥さまと会っていたら、わたし、倉科くんに言ったことを奥さまに言ってたと思うの」

「え?」

「でも、わたしは倉科くんと話した後だったから、何も言わなかった。言わないでいられたの」

和奏さんから目が離せなくて、じっと見ていると、目が合った。

「ありがとう。わたしの目を覚まさせてくれて」

和奏さんが、感謝の気持ちを込めて、柔らかく微笑んだ。

今までの俺なら、この笑顔にイチコロだったけど、今は笑顔を返すこともできなかった。
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