俺がしあわせにします

誕生日も知らない

ランチを食べ終わった椎名さんが、ポケットから何か取り出して、和奏さんに話しかけた。

「忘れるとこだった。ほら」

そう言って、ポケットから取り出したものを手渡す。

「何よ、ワイロなんて通用しないからね」

和奏さん、いつまで言ってんだか。

「ばーか、なんで俺がおまえに賄賂なんて渡すんだよ」

「だって倉科くん引き抜こうとしたじゃない」

「そりゃしたけど。おまえにそんなもん贈る必要ないだろ」

「有無を言わさず連れさろうっていうの?サイテー」

「自力で認めさせるって言ってんの」

「へえ〜、お手並み拝見しようじゃないの」

さすが椎名さん、営業エースだから出た言葉かもな。

それに引き換え、和奏さんはまるで子どものような応戦。
これは勝負ついてますよ。

「そんなこといいから、ほら!受け取らないと俺殺されるから」

「え?誰に?」

さすがに和奏さんも茶化さなかった。

俺も思った、誰にですか?

「俺の咲葉に」

「え?咲葉?なんで?」

彼女の名前を聞いた途端和奏さんの顔はぱぁぁっと明るくなる。

この前も思ったことだけど。

ほんと和奏さんて、椎名さんの奥さんが好きだよな。

さっきまで受取拒否体制だったくせに、椎名さんの手から包みを奪い取った。
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