俺がしあわせにします
じとっと和奏さんが俺を睨んでいる。

「あの、和奏さん?」

少し動揺したけど、それを悟られないように和奏さんに問いかけた。

「ウソ!」

どきぃ!ウソ!気づかれた!?

「ウソって」

俺はあくまで平静を装おうとする。

「絶対ウソでしょ!わたしに隠れて倉科くんを引き抜こうと誘惑したんでしょう!ほんとにヒト獲得には抜かりないやつなんだから」

あっ、そっち。よかった、和奏さんと椎名さんがそんな関係で。
まあ、そのハナシもあったけど。

「違いますよ。それに俺はその話には乗らないですし」

わかってるけど、と和奏さんは言うが、どうも歯切れが悪い。

「和奏さん、俺のこと信じられませんか?」

ほんとならこのセリフはこんなとこで使いたくなかったな。もっと甘いシチュエーションで。。。

と、まあ、いいや。これで納得しただろう。

しかし、彼女はまだぶつぶつ言っている。

「倉科くんのことは信じてるのよ。でも、あいつはヒト獲得に関しては諦めが悪いって言うか、決めたら諦めの二文字は存在しないっていうか。とにかくしつこいから」

へぇ、気が合いますね、椎名さん。

「大丈夫ですよ。そんな心配しなくても。椎名さんにはちゃんと伝わってますから。和奏さんに断りなくなんて、俺が納得しませんよ」

そこまで言うと、やっと和奏さんが顔を上げた。

「わかった。でも気をつけてね。あいつには世界をひっくり返す魔力があるから」

和奏さんも知ってるんだ、椎名さんが言った『世界がひっくり返ること』

魔力。。。それは椎名さんの?それとも・・・。

とりあえず俺はそこで思考を止めた。
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