俺がしあわせにします
「ごめん!遅くなった!颯多大丈夫?!」

駆けつけた修二がすごい勢いで駆け込んできた。

「聞いてよ修二!ここの店主ってば、客が酒頼んでるのに、出してくれないんだよ」

俺が振り返り、わざとらしく言うとハルが笑顔で修二に話しかけた。

「お疲れ、なに飲む?」

「ありがと、冷たい緑茶ちょうだい」

「了解」

ハルはカウンターで緑茶を淹れ始めた。

ハルの後ろ姿を見てハッとした。

くだらないやりとりをしている間、全然忘れてた。
ショックで落ち込みすぎてまた、動けなくなって、俺は再びここへ来たのだ。

なのに、ハルとのやりとりや修二にふざけてたら、今夜あったことですら、少し忘れかけてた。

「颯多、俺が店主にお願いしたんだよ。颯多はヤケ酒しに来るけど、俺が話を聞くまで絶対に酒は出さないでって」

俺の隣の席に腰掛けて、修二がにっこりと微笑む。

「わかってるよ。さっき聞いた」

「よかった、で今夜は何があったの」

修二の前にさっき俺に出した「プレミアム緑茶」とやらが置かれた。

「プレミアム緑茶、飲んでみて」

「へぇ、プレミアム?いただきます」

修二がグラスを口元に運ぶ。

ゆっくりと味わうように喉に流し込んでいく。

さっき一気飲みしたから、はっきり言って、味なんてまったく感じなかった。

一体どんな味だったのか、興味が湧いてきて、美味しそうに飲む修二を見つめてた。

視線に気づいたのか、修二が俺に視線を移した。

「喉乾いてるの?」

「え、あ、ううん、俺ずっと飲んでたから、そんなことはないけど」
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