俺がしあわせにします
気になって視線をグラスから動かせないでいると、

「あ、これ飲みたいのか。はい」

修二がプレミアム緑茶の入ったグラスを差し出す。

「いいよ、修二飲んで。さっきもらったんだけど、一気に飲んじゃって味わって飲まなかったから、なんか気になって」

俺が素直に話すと、

「また、頼めばいいのに」

しごく当たり前の答えを行った後、一人で頷いて、ハルに声をかけた。

「コレ美味いね。おかわりもらえる?俺と颯多の2杯分」

え?修二?

俺が修二を見ると、手を当てて小声で言う。

「言いづらい何かがあったんだろ」

そしてアイドル並みに鮮やかにウインクを決めた。

イケメンのウインクは破壊力抜群だ。

俺が女子だったら舞い上がってる、と思う。

「よかったです。そこのお客さまには先ほど感想もいただけなかったので、出し損と思ってたんですよ」

だ、出し損?

わざとらしく言って、ハルが丁寧におかわりをテーブルに置いた。

「しっかり味わって感想いただけますと幸いです」

こっちも鮮やかに微笑んで、俺と目をあわせる。

「はーい」

俺は返事をして、おかわりを飲んだ。

ん?さっきは全然感じなかったけど、これほんとに美味しい!
お茶のなんたるかはわからないけど、これがちょっと高級だってことはなんかわかる。

俺の顔色を伺っていたからか、ハルが俺を見つめる。

「言葉に出してくれないと伝わらないんだけど」

あ、そうだな。
俺は美味しかったことと、喉越しとか甘さとか、感想を声に出して、伝えた。

「毎度あり〜」

店主は上機嫌になった。
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