俺がしあわせにします
修二は予想外だったらしく、俺の質問に対して即答しなかった。

いつもなら、サクッと答えをくれるのに。

勝手なのはわかってるけど、そんな彼の態度にムカついた。

「なんで、何にも言わないの?修二?いつもみたいに余裕の笑顔で答えろよ」

修二は何か考えてるようだったけど、俺にはもう、余裕がなかった。

せっかく落ち着いてきてたのに、あのときの和奏さんの、俺を奈落の底に突き落とした笑顔が頭から離れなくて。

「俺が和奏さんに出会ったときは、もうカンケイは出来上がってたんだよ。俺が彼より先に会ってたら、絶対そんなことにならなかったのに!もっと素敵な笑顔で「幸せ」って言わせたのに!」

頭に血が上ってきて、もう止められない。

「それなのに!神さまって意地悪だよね。出会う順番なんて選べないじゃん!
俺なんて、1ミリも彼女の目には映ってなかったんだ!2年間俺の目には彼女しか映らなかったのに」

こんなこと修二に言ったって何も解決なんかしない。

そんなことアタマではわかってる。
わかってるけど。

「あんな笑顔で幸せって言われたら、俺の出る幕なんてワンシーンもないんだよ!

こんなになるのに、なんで俺は和奏さんと出会ったの?ねぇ!」

まだ考え事をしている修二に掴みかかって、揺すった。

ハルがやめろと俺を修二から引き離そうとした。
でも、修二はその手を制する。

「ねぇ!なんとか言えよ!」

俺はさらに修二を揺すったが、思い出された笑顔に怒りよりも悲しみが勝って。

「俺を助けに来てくれたんでしょ、なんとか言ってよ」

修二のワイシャツを引っ張って縋り付くように言った。

今度は自覚症状があった。

今俺は泣いている。

さっき通常運転に戻りつつあったのに。

思い出したら、あっという間にコントローラーが壊れちゃった。

相手が修二とハルなのをいいことに俺は、制御を失った。

静かになった俺の背中を優しく手でさする。

頭の上から、声が聞こえた。

「大丈夫か?」

いつも俺を心配する聞き慣れた声色。

俺が答えるタイミングを逸すると、会話が聞こえてきた。
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