俺がしあわせにします

事実は小説より奇なり

エントランスをくぐると、打ち合わせブースにいる人物に目が留まった。

和奏さん?

今日は来客予定はなかったはず。

席に着く前に会えるなんてラッキーと思って、俺は後ろから彼女に近づいた。

後ろから挨拶して驚かそうとも思ったけど、やっぱり顔が見たくて、前に回り込んだ。

「和奏さん、急な来客ですか?」

俺の目の前に立っていたのは、確かに彼女だ。
俺の愛しい人「宮原和奏」だ。

でも、俺の知ってる彼女じゃなかった。

「どうしたんですか!?その服」

俺の目に飛び込んできた彼女のスーツの中のシャツには、薄茶色の汚れがあった。

思わず手を伸ばして指先で触れると、濡れていた。
胸にかかっていた髪も同じように。
そして、コーヒーの香りがした。
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