俺がしあわせにします
「はい」

空気が彼女の小さな声で、わずかに動いた。

俺のお願いを和奏さんは素直に聞き入れてくれた。

腕を緩めて、彼女を解放した。

「ほんとにいいんですね?取り消し受け付けませんよ」

静かにもう一度頷く。

「こんな真剣に言われたら、もうはぐらかせないよ」

「和奏さん」

俺はかがんで、彼女に目線を合わせた。

揺れた瞳を見つめる。

「そんな不安そうなカオしないでください。すぐに答え出せとか言いませんから。ちゃんと待ちます」

「え?あ、うん。・・・ありがとう」

俺に心配されたことが恥ずかしかったのか、小声でお礼を言った彼女の顔はみるみる赤く染まっていく。

「和奏さん、可愛い」

思わず心の声が漏れてしまった。

そんな俺の声を聞いて、和奏さんは小さく講義の声を上げた。

「倉科くんのばか」

俺は、抱きしめたい衝動を抑えるので、精一杯だった。
< 94 / 195 >

この作品をシェア

pagetop