はやく俺のモノになればいいのに
背後から実柑に声をかけてきたのは、実柑をガッカリさせたあの男だった。


「げ」
「傷つくな~。顔見た途端に『げ』って」


一緒に登校してきた子に

「またね」

別れを告げた、桜井先輩。


不満げな表情を浮かべるも

「わかったー」

と去っていく女の先輩。


そのやり取りから


"桜井先輩の命令は絶対"

という雰囲気が感じとれた。


「俺に会いに来てくれたんだ?」
「アホなんですか」


――アホ


「相変わらずトゲトゲしいね」
「嫌いな人に愛想ふりまく意味がわかりませんから」


――キライ


「そんなこと、社会に出たら通用しないよ」
「ここは高校ですからご心配なく」


実柑が容赦なく先輩相手に毒づくのも

桜井先輩が甘いマスクをキープしているのも


……見ていられない。


喧嘩になる前に、実柑を連れて、この場を離れなきゃ。
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