はやく俺のモノになればいいのに


「行かないんだ?」


イジワルすぎやしませんか。


「いき、ます」
「ふーん。じゃあ。はなすね」


――はなす?


「イヤっ……」


私を抱き締めている腕、(ほど)かないで。


反射的に、ユキさんのシャツを――ギュッと掴んだ。


「モモは。俺のこと本当に好きだね」


突然

頭の後ろに大きな手が回ってきて


「俺も」


ユキさんは、私を解放するどころか


さっきより、ぎゅーっと抱きしめてきて。


「好き」


耳元で、甘く囁いてくる。


校舎にチャイムが鳴り響く。


それが祝福のベルのように聞こえるのだから


『お花畑』


って実柑に笑われてしまうかもしれない。


「ユキさんも……えっ……すき?」
「うん」


その“好き”って


「好きだよ、モモ」


どういう好きですか。
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