はやく俺のモノになればいいのに


甘ったるい香りが鼻についた。

他人に主導権を握られるのはいい気分ではなかった。


それでも幾らか身体は満たされた。


「またシよ」


残ったのは、虚無感のみ。


いつ誰が来るかわからない非常階段

はたまた

暗がりの公園で


時折、野性動物みたいに交わった。


単なるガス抜きだった。


優しさもない。愛もない。


そんなもの互いに求めていない。


ただ、いっときの快楽のために行為に及んだ。


「……ねえ。名前、呼んでよ」
「知らない」
「うーわ。サイテイ」
「じゃあ俺の名前知ってるの」
「知ってるよ? みんなの王子様、ミユキくん。クールな君がこんなことしてるってファンが知ったら泣いちゃうね」
「どうでもいい」


カラダ以外に繋げるものなんてない。


貴重な時間を割いて

無駄な体力を使って

俺はなにをしているのだろうと

バカになって


――――そして、空っぽになる。
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