はやく俺のモノになればいいのに
イチヤくんから目をそらさずに、じっと見つめるユキさん。
「俺まで騙そうって魂胆か?」
「君のようにまっとうに生きられることは評価に値するのだろうけれど。歪んでしまった人間は。君が想像できないような生き方をする。それを理解してもらう気も。同情を引く気も、更々ない。もちろん君をコントロールしようなんて無駄なこともするつもりない」
「ゴタゴタうるせえ。桃葉をこれ以上傷つけてみろ。そんときは――」
「殺す?」
「……ぶん殴ってやりたい。今だって」
イチヤくんが、ユキさんから離れる。
「だけど桃葉の好きなやつを桃葉の目の前で殴ってみろ。桃葉が傷つく」
「そうだよね。俺もきっと同じ気持ちになる。この先、モモを傷つける人間が現れたら」
「どの口が言ってる」
「約束しよう。どんな壁にぶつかったとしても。モモが傷つかなくていい道を死ぬ気で模索する」