はやく俺のモノになればいいのに
「冷たい、でしょ?」
「ちょうどいいな。いや。こんなの俺にはぬりい」
「パンツ、濡れちゃったよ」
「天気いいから干しときゃすぐ乾くだろ。その間俺がノーパンってことは。誰にもチクんなよ」
放っておくこともできるのに。
「どうして助けてくれるの」
「さあ。どうしてだろうな」
「……私が。どんくさくて。バカ、だから」
「そんなこと昔から知ってる。バカならバカなりに自分のこと大切にしやがれ」
私のためにあんなに怒って。
そんなに一生懸命になってくれて。
「……ありがとう」
「桃葉」
「ごめん、ね」
「ねーな。もう、あんなボロ猫のことは諦めろ」
「えっ」
「ほらよ」
頭までビショビショになったイチヤくんが
振り返りざまに、なにかを、こっちに投げる。
それを慌てて掴んだ。
「ナイスキャッチ。ぜってえ落とすと思ったのに」
「イチヤくん、が。投げるのうまいから」
手のひらに戻ってきたのは、あの黒ごまのキーホルダー。
「よかったあ」