はやく俺のモノになればいいのに
耳元に手をあてられていて、聞こえにくい。
「イチヤ、くん?」
イチヤくんが私から手をはなす。
「どう……したの」
じっと見つめてくるイチヤくんは、神妙な顔つきをしている。
「イチヤく――」
「俺は桃葉を正しい道に導いてやれる。そう信じたい」
「……信じて、いいよ」
イチヤくんのおかげで、私が心の底から欲しいものを見つけられた。
"彼女にならずに関係をもつ"
か
"諦めるか"
って狭い選択肢の中で悩んでいたけれど
"彼女になって愛を育む"
って新しい未来が、切り開けた。
「だけどそれは。あくまで俺の主観で。エゴで。結局桃葉の幸せを決めるのは、俺じゃなくてお前自身なんだよな」
悔しそうに私から目をそらしたあと
「桃葉」
もう一度、じっと見つめてくると
ギュッと正面から抱きしめられる。
「幸せになれ」