はやく俺のモノになればいいのに


人混みとか苦手そうなのに

マイペースなのに


私に、合わせてくれた。


『一人なら。まず来ない』


って言われて焦ったけど


『モモ見てると飽きないし。俺のとなりでモモが幸せそうだと俺も幸せだから、大丈夫』


と言ってくれたんだ。


忘れられない思い出になった。


「いいよね、和服」
「私もそう思います……!」
「また来年も。着てね」


次の夏も、あなたと一緒にいられるのが嬉しい。


今が人生で一番幸せな気がして。


でも、これからもっと、素敵なことがあるんだなってわくわくもしている。


「脱がしてみたいな」
「へ?」
「モモが時間かけて着てきたのを。俺が崩す。いっかい乱したら整えるのが容易じゃない。モモは一人じゃきっと上手く着られないから、すごく戸惑うんだ」


私で遊ぼうとしていませんか……!?


そろそろ下校時刻になる。


このままバス停に向かい、バスが来たら、お別れだ。


今日は金曜日だから、明日と明後日は会えない。


…………会いたい。


「ユキさん」
「ん?」
「この頃。ユキさん……」


ダメだ。

言えない。


『なにもしてこないですね?』


なんて、言えないよ。
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