はやく俺のモノになればいいのに


イチヤくんが、真剣な眼差しで見つめてくる。


「俺にできることあったら。なんでもする。ワガママになっていい。甘えろ」
「……ありがとう」
「それと。これ」


手渡されたのは、お守りだった。


「神様とか信じてるわけじゃない。俺は俺を信じてるからな」
「うん」
「でも。あったら少しくれえは。なんだ。安心するか?」


安産祈願のお守り、買って来てくれたんだ。


「4つ目」
「は?」
「お母さんと。実柑と。イチヤくんと、それから――」


ユキさんが、買ってきてくれた。


「……クソが。またあいつに先こされたのかよ」


授業開始のチャイムが鳴る。


「行かなきゃ」
「あー……」


髪をかきあげ、うつむくイチヤくん。


「イチヤくん?」
「今言うことじゃ、ねーんだよな」
「え?」
「タイミング的に。終わってる」
「どう……したの?」
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