はやく俺のモノになればいいのに
本当に?


ハイって答えたあと――期待させておいて


『ジョークなのに』って笑うのナシですよ?


返事を保留したままユキさんの腕の中にいると、次第に雨音が小さくなっていく。


夢じゃない。


ユキさんから伝わってくる、このぬくもりは、紛れもなくホンモノ。


「通り雨だったね」


ユキさんは私を離すと、空を見上げた。


私もつられて空を見上げてみるが、その前に、上を向いたユキさんの喉仏に見とれてしまったのはナイショ。


「……虹」


目に飛び込んできたのは、空にかかる大きな虹。


感動しながらも、カラダに残っているユキさんの体温に気を取られている。


冗談か本気かわからない甘い誘いに、胸がときめきっぱなし。


「この時期の虹って珍しいよね」
「そうなんですか」
「うん」
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