スイセン
…数ヶ月経った7月の朝。

「じゃあ、行ってくるね。ピンポン来ても出なくていいからね?わかちゃん♡」

「子どもじゃないもんっ。行ってらっしゃい!」

「あはは、行ってきま〜す」

少しふくれた後、笑顔で手を振る羽椛(わかば)の頭を撫でて、俺は家を出た。

俺は彼女の笑顔が好き。

いつからだろう。多分、ずっと前から。

羽椛とはいわゆる幼馴染みで、小さい頃からよく一緒に遊んでいた。

彼女はいつも笑顔で明るい女の子。

そして俺はお調子者でちょっと気が弱かった。

すぐ調子に乗るうるさい奴だけど、先生に怒られるとすぐ涙目でいじけてるような。

「ほたかくんはすぐ泣くんだから〜」

って、俺より2個年下だけどよく頭撫でてくれてた。
いや恥ずかしい奴っすね俺。

いつでもそばで笑ってくれるから、俺もすぐに元気になれたんだよな。

それでも年上ぶって「わかば」って呼び捨てしてたっけな。

「おはようございまーす」

昔のことを思い出しながら出勤していると、あっという間に会社に着いてしまった。
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