スイセン
「あっ 花崎(かざき)さん、こんばんは~~」

20時半頃。近所のスーパーで色々な種類のキムチと睨めっこしていた時の事だった。

突然のことで少し驚きながら、私は声のする方へ振り向いた。

すぐ右隣で私の顔を覗き込む一人の男性。

「びっくりした…麦野(むぎの)さん?」

「まさかここで会うとは思いませんでした」

こちらに笑いかけてから白菜キムチを1パック手に取ってカゴに入れる麦野さん。

「あ、そのキムチとこっちのキムチで迷ってたところなんです」

「こっちはさっぱりした感じで美味しいですよ、オススメ!」

「へえ~~。じゃあ麦野さんオススメの方、買ってみよっかなあ」

柔らかい笑顔に返すように私も口角を上げて同じパッケージのものを手に取った。

「じゃ、またお店行きますんで」

「はーい、お待ちしております」

お互いに右手を軽く上げて、別方向へ進んだ。
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