スイセン
…「ただいま〜」

「おかえり、羽椛ちゃん」

玄関のドアが開いたのを確認して、手元にスタンバイしていた花束を背中に忍ばせる。

スリッパを履いて、顔を上げた羽椛。
俺の顔を見て首を傾げる。

「どうしたの?帆嵩くん。なんかすごいニコニコしてる…」

パッと勢いよく花束を出し、両手で羽椛に差し出す。

「羽椛ちゃん、いつもありがとう。今月で2年目だから。お祝い」

途端に彼女の瞳が潤み、一瞬視線を下に落とした後俺を見つめてクシャッと笑った。

「ありがとう、帆嵩くん…っ。帆嵩くんこそいつもありがとう。こんな私なのに優しくしてくれて、ずっとそばに居てくれて…」

喜んでくれる彼女に、安心したし堪らなく愛しく感じた。

キスをして、そっと頭を撫でる。

「今日はね。わかちゃんの好きな料理にしました〜っ」

そういうと、スンスンと匂いを嗅いで、目をキラキラさせる羽椛。

犬みたい。可愛い。

「えええ…やったぁ!ロールキャベツでしょ?!」

ピンポーン、と答えて羽椛の手をひいてテーブルに向かった。
< 20 / 30 >

この作品をシェア

pagetop