スイセン
安心して、目を閉じたまま帆嵩くんに話しかける。

「お花、ピンクだったね。ありがとう」

私の好きな色、覚えてくれてた。

「うん…」と眠そうな声が返ってきて私の声も優しくなる。

「お手紙もありがとう。嬉しかった」

彼がお手紙書いてくれるなんて、珍しい。

沢山考えてくれたのかな。

返事はなく、代わりに寝息が聞こえてきた。

「ふふ…寝ちゃった?」

やっぱり返事はないので、もう一度「どこにも行かないで」と心の中で願いながら耳を押し付け、繋いだ右手に少し力を入れた。


---「もー、ほたかくん?そんなんだからよわっちいっていわれちゃうんだよ」

---「だってさ、だってさぁ?せんせいのおこったかおってすんごいこわいんだよ?」

これは保育園の時。


---「麦野って3年生のおんなといっつもいっしょだよなー。つき合ってんの?」

---「は?何いってんの。わかばとは幼なじみなだけだよ」

これは小学校の時。
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