スイセン
---「なんだよカーバ。こんなとこまで来んなって」

---「カバじゃないもん!だって…学校行きたくない」

友達に仲間外れにされた時、小学校に行きたくなくてランドセルのまま帆嵩くんのいる中学校まで行ったこともあったな。

その時の帆嵩くんはちょっと意地悪で、私の名前が羽椛(わかば)だからって後ろの二文字を取ってよくカバってからかわれてた。

中学生になって、制服を着始めた彼は一気に大人の男の子になったように見えて少し遠く感じた。

私はいつから好きだったかな。

きっとずっと前から。

私の初恋は、帆嵩くん。

ずっと彼の背中を追いかけて来たし、隣を歩いてきたから。

もしいなくなってしまったらって考えると生きていける自信がないの。

そっと彼の胸から頭をずらし、体と左腕の間に自分の体をおさめた。

そして左腕にぎゅっと抱きつく。

前からも後ろからも帆嵩くんの体温が感じられて、心の穴が塞がるようで。
ずっとこうがいいなって思う。

そんなことを思いながら、いつの間にか私も眠っていた。


< 26 / 30 >

この作品をシェア

pagetop