スイセン
…『今日は飲み会があるから、帰り遅くなると思う。先にご飯食べててね。』

振動したスマホに表示されたメッセージを読んで、返事は返さずにタオル生地の掛布団に体をうずめた。

(今日、帰り遅いんだ。でも、一緒に食べる夜ご飯じゃないと美味しくないよ)

「食べたくない」

ボソッと呟いて、目を閉じた。

食欲が湧かないので寝ようと思った。

「……」

(飲み会、女の人もいるのかな。そりゃいるよね。やだなぁ…帆嵩くんかっこいいからいっぱい話しかけられちゃうかも)

「私の帆嵩くん」

口に出してみるけど、静かな部屋に1人で寝転がるセミダブルのベッドは無駄に広く感じて寂しさが増した。

ダメだな。こんなすぐに気持ちが沈んでしまうなんて。

ベッド脇に置いてある睡眠導入剤を手に取り、ペットボトルに入ったお水で体内に流し込む。

この薬、急に眠気が来てどうしようも無くなるから働いてる時は苦手で睡眠不足でも飲まないことが多かった。

お医者さんに相談してみたけど、とにかく眠ることが大事と言われて以来、自分が間違ってる気がして言い出せなくなった。

だけど休職してから、こういう1人で眠らなくちゃいけない時には頼るようになった。
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