スイセン
無理やりにでも眠って、少しでも思考を止めたい。

しんどくなるのを忘れたい。逃げ道みたいなものかもしれない。

強制的に思考も体も止めてくれる。

薬に逃げてしまう自分のことが情けなくも感じるけれど。

それを忘れるためにも、飲んでしまう。

今日は帆嵩くんがいない。

何時に帰ってくるかな。飲みすぎてないかな。

…カーテン開けっ放しの窓から容赦なく差し込んでくる陽の光に、ゆっくりと意識がハッキリとしてくる。

寝すぎたのかもしれない。自分の体の重さを感じながら、天井をぼーっと見つめる。

今は何時だろう?帆嵩くんは?

スマホを開いてみると、『これから帰るね。』のメッセージ。

時間からするにきっと終電間近。

辺りを見渡してみるけど、彼の姿はない。

頑張って体を起こして、リビング、玄関、トイレ、浴室…見てまわるけどいない。

(帰ってきてない…?どこにいるの?)

一気に身体中に不安が押し寄せてきた。

ドクドクと早くなる鼓動。上手く呼吸が出来ず、少し胸が苦しくなる。
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