スイセン
未読だった彼からのメッセージを開いて、震える手で通話ボタンを押した。

♪~~♪~~♪~~……。

(なんで出ないの…。帆嵩(ほたか)くん?)

通話をキャンセルしようとした時、

『もしもし羽椛(わかば)ちゃんっ?!』

帆嵩くんの慌てた声が聞こえてきた。

「帆嵩くん、どうしたの?」

安堵と共に残る不安。

『ごめん。昨日は同僚の家で寝ちゃってさ…』

「そうだったんだ…二日酔い、大丈夫?」

(帰るねって、言ったのに)

『ちょっと頭痛がするけど、なんとか大丈夫だよ』

「もー、心配だよ。気をつけて帰ってきてね?」

明るく言うけど、“帰ってこなかった”という事実に心が曇る。

(本当に同僚のお家?)
なんて考えてしまう。どれだけ私の心は余裕が無いんだろう。

帆嵩くんが帰ってきたら、笑顔で迎え入れるんだ。

1人でも大丈夫だったよって、そんな顔で。

嫌われたくない。良い彼女でいなくちゃ。

いや、良い彼女にならなくちゃ。

そう言い聞かせて、無理やり口角をあげてみる。

それでも心はざわついたまま。
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