スイセン
麦野さんは、3ヶ月ほど私のお店に月に2回くらいの頻度で通ってくれているお客様。

今年の春、この区に引っ越して来たらしい。

店員と客の関係なだけなので詳しいことは何も知らない。

そういえばいつもスーツ姿だな。うん、本当それくらいしか。

今日の夜ご飯はキムチ丼にしようっと。

家に帰って炊いておいた白米の上に白菜キムチをたっぷり盛り付けて、その上にチーズを乗せてレンジでチン。

最近私の中で来ている手抜きご飯。

｢いただきますっ｣

手をぱちんと合わせてから、キムチ丼を頬張る。
と同時にスマホの着信音が鳴り始めた。

[みお]の表示を確認してから、画面をスライド。急いで口の中のキムチ丼を飲み込みながら耳に当てた。

｢もしもし凛獰(りんどう)~~？｣

｢…ｺﾞｸﾝｯ…はーい、何？｣

｢ねえ聞いてよぉ〜〜彼氏がね?!あのね、あのね…っ｣

言葉では無く鼻をすする音が聞こえて来た。

どうやら喧嘩中らしい。

彼氏のことで電話がかかってくる時は大抵こう。
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