スイセン
私は今、麦野さんを肩で支えながら何とか歩いている。

ーーー「あっ花崎(かざき)さん~~どうもっ」
ーーー「麦野さん?!大丈夫ですか…ってちょちょちょっ」

こちらを見てふにゃりと笑い、直後体の軸が大きく揺れるので心配になって。

つい「家まで送りましょうか?」なんて。

私もかなりの酔っ払い。
それなのに他人の介抱を2人分もすることになるとは…。

「ところで麦野さん、お家は…ちょっと、麦野さん?」

「…ん…?」

そういえばいつもの癖で自宅に向かってしまっていた。それに気づいてすぐに話しかける。

しかし、今にも寝そうな目でこちらを見つめるだけの麦野さん。

「お家は?」
「駅近…の…」
「寝ないで!!」
「寝て、ない…スゥ…」

いやいやほぼ寝てるってば…。
ふと顔を上げればもう私の家の前。

駅近のどこよ…。

正直私ももう体がしんどい。遠かったらどうしよう。


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