スイセン
仕方ない。明日の朝帰ってもらえばいい。
まあ寝るのは別々だし。

ふわふわする頭の中でなんとか思考を巡らせながら、そっと彼の横から離れようとした。

ぎゅっ。

「え」

「待って、羽椛(わかば)

振り返って見ると、目を閉じたまま私の服の裾を掴み、小さく呟く麦野さんがいる。

「あの、私はワカバさんじゃ…」

どさっ。

言い終わる前にぐいっと引き寄せられ、何故か麦野さんの体の上に重なる形で抱きしめられている私。

ん?意味わかんない。

若干酔いが覚めたように感じたが、アルコールが回った体にはふんわりとしか力が入らない。

「あの、ごめんなさい。私…」

言いかけて、
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