小っさいおっさんの、大きな野望~アイドルHinataの恋愛事情【2】~
12 まあ、視聴率さえ取れてたらええけど。
そしたら、そう。
高橋クンを追った、樋口クンと竹ノ原クンが担いだカメラから届いた映像は。
高橋クンが道坂サンに、なんとプロポーズする場面やった。
スタジオ中は、仰天。
もちろん、ボクも。
なんや、高橋クン。
道坂サンのこと、ホンマの本気やったんや。
どうやら、話を総合すると。
あの居酒屋にいたときには既に、高橋クンは結婚の意志を固めていたらしい。
その帰り道に伝えるつもりやったけど、道坂サンが勘違いしてしもて、言えへんようになって。
そこから、どんどんとすれ違ってしまって、今日まで来てしもた、ということ。
どうなることかと思ったけど、結局、『雨降って、地固まる』ってやつやな。
……あれ、でもちょっと待って?
何か、大事なことを忘れている気がするんやけど?
「いよっ!! ご両人!! お帰りなさぁーい!!」
戻ってきた二人を、祝福モードで迎えるスタジオ。
「えっ…………なんで?」
二人とも、驚いている。
「『高橋諒のプロポーズ大作戦』、生でオンエア中!!」
樋口クンが、高橋クンの顔をアップで映した。
そう、生放送で流れちゃいましたよ、しかも全国に。
高橋クンは、『やられた……』という表情で、がっくりとうなだれた。
「連れてきたぞぉー」
そこへ入ってきたのは、中川クンだ。
一人の女性の腕を掴んで、引っ張って歩いてくる。
その女性は、まさしく忘れていた『何か』。
そう、なーこちゃんやった。
「あのー、なーこちゃんね。この記事について、ちょっと説明してほしいんやけど」
そやねん。
このコが、高橋クンといったいどういう関係なのか、明らかにならんことには、めでたしめでたし、ってわけにいかんやろ。
なーこちゃんは、なぜか中川クンと視線を交わしたあと、ゆっくりとカメラ目線で言った。
「あたしは、高橋諒の……妹です」
―――――――――――――!?!?
ええええええええええ!?!?!?
いいいい、妹!?!?!?
「ええー!? じゃぁ、なんで記事が出たとき、否定もせんと、ノーコメントやったん?」
「だって、みんなが勘違いして盛り上がってるの、面白かったしぃ」
おいおいっ。
キミが面白がってたせいで、いろんな人が振りまわされてるねんで?
「えっ……ちょっと待ってよ。じゃぁ、『諒クンはあたしのもの』とか言ってたのはなんだったの?」
「くだらないことを言ったのはおまえか、奈々子っ!」
「道坂サンには、あたしが妹だってちゃんと説明してあると思ったしぃ。道坂サン、からかいがいがあって楽しいんだもん」
高橋クン、道坂サンに説明してなかったんか?
そらぁ、アカンよ。完全に、キミの責任やで、高橋クン。
そういえば、あの人。
この場にいない、花本サンですよ。
実は、他の仕事も平行してやらなきゃあかんってことで、別室からちょいちょい中継することになってたんですけど。
予定してた時間よりだいぶ過ぎてしもて、待たせたままになってるんですわ。
しかも、こちらの状況はわかってない、という状態で。
……どういう反応するんでしょうね。
「じゃぁ、そろそろこの人を呼んでみましょうかね。中継先の、花本サァーン」
モニターに、待ちくたびれた花本サンの姿が映し出された。
「遅いっ! いつまで待たせんねん!」
「あのね、花本サン、聞いてくださぁーい」
「……なんやねん?」
「道坂サンね、結婚が決まりました」
「……………………………………はぁ?」
「だからね、道坂サンが結婚するんですって。高橋クンと」
「…………そんな、ドッキリしかけても、オレは信じへんで?」
……そうでしょうね。
まだ、花本サンは、『高橋クンが道坂サンを騙して裏切った』と思ってますから。
「いや、ほんまですって。高橋クン、カメラに見せたって」
ボクに促されて、高橋クンは道坂サンの左手を、そこにはめられている指輪が映るようにカメラの前に差し出した。
こちらと中継が繋がってるときだけは、こちらの映像もあっちに流れるようになってるから、花本サンにも道坂サンの左手が見えているはず。
「ね? ほんまでしょ?」
「…………道坂ぁぁ!! オレら、ずっと『モテない芸人同盟』結んでたやないかぁぁ!!」
いつ結んだんですか、そんな同盟。
花本サンは、暴れ出した。
スタッフが数人で押さえにかかる。
「おまえだけは、ずっと裏切らへんと思うとったのに!! どいつもこいつも、オレを置いてけぼりにして、幸せになりやがって!! おまえらな、全員まとめて不幸にしてやる!! 家に火ぃつけ―――」
バツンッ!! と音を立てて、中継が途絶えた。
多分、笑いの分かる人やったら、『テレビ的に面白いから、ああ言ってる』と思うでしょうけど。
ボクには分かりますよ。
あの発言の、7割は本気ですわ。
次は、あの福山クンの番なんですが。
まぁ、ここも詳しいことは割愛させてもらいますけど。
福山クンの言うてたとおり、福山クンと高橋クンは中学の先輩後輩の仲やったということ。
それから、高橋クンが道坂サンにプロポーズするらしいことに、なんとなく勘付いていたこと。
そして、なーこちゃんが高橋クンの妹であることを知っていた、ということ。
全部分かってたんなら、言うてくれたらよかったのに。
そんなこんなで、生放送での騒動は一応終わって。
その後の番組も、大幅に予定を変更しながらも、まぁまぁなんとかこなした。
高橋クンを追った、樋口クンと竹ノ原クンが担いだカメラから届いた映像は。
高橋クンが道坂サンに、なんとプロポーズする場面やった。
スタジオ中は、仰天。
もちろん、ボクも。
なんや、高橋クン。
道坂サンのこと、ホンマの本気やったんや。
どうやら、話を総合すると。
あの居酒屋にいたときには既に、高橋クンは結婚の意志を固めていたらしい。
その帰り道に伝えるつもりやったけど、道坂サンが勘違いしてしもて、言えへんようになって。
そこから、どんどんとすれ違ってしまって、今日まで来てしもた、ということ。
どうなることかと思ったけど、結局、『雨降って、地固まる』ってやつやな。
……あれ、でもちょっと待って?
何か、大事なことを忘れている気がするんやけど?
「いよっ!! ご両人!! お帰りなさぁーい!!」
戻ってきた二人を、祝福モードで迎えるスタジオ。
「えっ…………なんで?」
二人とも、驚いている。
「『高橋諒のプロポーズ大作戦』、生でオンエア中!!」
樋口クンが、高橋クンの顔をアップで映した。
そう、生放送で流れちゃいましたよ、しかも全国に。
高橋クンは、『やられた……』という表情で、がっくりとうなだれた。
「連れてきたぞぉー」
そこへ入ってきたのは、中川クンだ。
一人の女性の腕を掴んで、引っ張って歩いてくる。
その女性は、まさしく忘れていた『何か』。
そう、なーこちゃんやった。
「あのー、なーこちゃんね。この記事について、ちょっと説明してほしいんやけど」
そやねん。
このコが、高橋クンといったいどういう関係なのか、明らかにならんことには、めでたしめでたし、ってわけにいかんやろ。
なーこちゃんは、なぜか中川クンと視線を交わしたあと、ゆっくりとカメラ目線で言った。
「あたしは、高橋諒の……妹です」
―――――――――――――!?!?
ええええええええええ!?!?!?
いいいい、妹!?!?!?
「ええー!? じゃぁ、なんで記事が出たとき、否定もせんと、ノーコメントやったん?」
「だって、みんなが勘違いして盛り上がってるの、面白かったしぃ」
おいおいっ。
キミが面白がってたせいで、いろんな人が振りまわされてるねんで?
「えっ……ちょっと待ってよ。じゃぁ、『諒クンはあたしのもの』とか言ってたのはなんだったの?」
「くだらないことを言ったのはおまえか、奈々子っ!」
「道坂サンには、あたしが妹だってちゃんと説明してあると思ったしぃ。道坂サン、からかいがいがあって楽しいんだもん」
高橋クン、道坂サンに説明してなかったんか?
そらぁ、アカンよ。完全に、キミの責任やで、高橋クン。
そういえば、あの人。
この場にいない、花本サンですよ。
実は、他の仕事も平行してやらなきゃあかんってことで、別室からちょいちょい中継することになってたんですけど。
予定してた時間よりだいぶ過ぎてしもて、待たせたままになってるんですわ。
しかも、こちらの状況はわかってない、という状態で。
……どういう反応するんでしょうね。
「じゃぁ、そろそろこの人を呼んでみましょうかね。中継先の、花本サァーン」
モニターに、待ちくたびれた花本サンの姿が映し出された。
「遅いっ! いつまで待たせんねん!」
「あのね、花本サン、聞いてくださぁーい」
「……なんやねん?」
「道坂サンね、結婚が決まりました」
「……………………………………はぁ?」
「だからね、道坂サンが結婚するんですって。高橋クンと」
「…………そんな、ドッキリしかけても、オレは信じへんで?」
……そうでしょうね。
まだ、花本サンは、『高橋クンが道坂サンを騙して裏切った』と思ってますから。
「いや、ほんまですって。高橋クン、カメラに見せたって」
ボクに促されて、高橋クンは道坂サンの左手を、そこにはめられている指輪が映るようにカメラの前に差し出した。
こちらと中継が繋がってるときだけは、こちらの映像もあっちに流れるようになってるから、花本サンにも道坂サンの左手が見えているはず。
「ね? ほんまでしょ?」
「…………道坂ぁぁ!! オレら、ずっと『モテない芸人同盟』結んでたやないかぁぁ!!」
いつ結んだんですか、そんな同盟。
花本サンは、暴れ出した。
スタッフが数人で押さえにかかる。
「おまえだけは、ずっと裏切らへんと思うとったのに!! どいつもこいつも、オレを置いてけぼりにして、幸せになりやがって!! おまえらな、全員まとめて不幸にしてやる!! 家に火ぃつけ―――」
バツンッ!! と音を立てて、中継が途絶えた。
多分、笑いの分かる人やったら、『テレビ的に面白いから、ああ言ってる』と思うでしょうけど。
ボクには分かりますよ。
あの発言の、7割は本気ですわ。
次は、あの福山クンの番なんですが。
まぁ、ここも詳しいことは割愛させてもらいますけど。
福山クンの言うてたとおり、福山クンと高橋クンは中学の先輩後輩の仲やったということ。
それから、高橋クンが道坂サンにプロポーズするらしいことに、なんとなく勘付いていたこと。
そして、なーこちゃんが高橋クンの妹であることを知っていた、ということ。
全部分かってたんなら、言うてくれたらよかったのに。
そんなこんなで、生放送での騒動は一応終わって。
その後の番組も、大幅に予定を変更しながらも、まぁまぁなんとかこなした。