小っさいおっさんの、大きな野望~アイドルHinataの恋愛事情【2】~
13 誰やねん、この若いにーちゃん。
そして、番組終了後。
「――どういうことですか」
高橋クンと道坂サンの事務所関係者が、わざわざスタジオに乗り込んできた。
「……すみませんでした。全部、僕の責任です」
高橋クンが、深く頭を下げた。
「あんたね、高橋に付きまとわないでくださいよ。何年か前にも、あったでしょう? あんた、またうちの大事な商品を潰す気か!?」
高橋クンの事務所の人が、道坂サンに詰め寄った。
「本人を前にして『商品』なんて言い方、ちょっとどうかと思いますけど」
見かねて、ボクが口を挟んだ。
「何年か前って、あれでしょう? ウチの番組で高橋クンがプールに落ちて、熱出したやつ。あれ、ただの偶然の事故ですやん。道坂サンが故意にしたこととちゃいますよ」
ボクが援護すると、高橋クンはそれに続けて言った。
「そうですよ。それに、僕はすぐに熱も下がって、その後の仕事にはなんの影響もなかったじゃないですか」
「しかしね……」
「だいたい、彼女が僕に付きまとってるんじゃありません。僕が、彼女に付きまとってるんです」
高橋クンは、事務所の人をまっすぐ見て言った。
「お互いの仕事には絶対に悪影響を与えません。だから……お願いです。僕のわがままを聞いてください」
再び、高橋クンが深く頭を下げる。
「……そんなわがまま、聞けるわけないだろう!? おまえに、何年もの間、いくらかけてきたと思ってるんだ! この先、既に大きな仕事も決まって―――」
「もう、そのくらいでイイんじゃナイ?」
背後から、怒り狂う事務所の人の言葉をさえぎったのは……。
……おや? なんや、見たことない、若いにいちゃんや。
見たところ、20歳前後の……いや、もっと若いか?
かなり小柄で華奢な、なかなかのイケメンにいちゃん。
「あ、あなたは…………」
高橋クンの事務所の人の顔色が変わった。
『Hinata』の3人も、驚いた顔をしている。
若いにいちゃんは、ゆっくりと前に歩み出た。
「高橋がさ、『仕事に悪影響を与えない』って言い切ってるんだ。結婚ぐらい、させてやったら?」
「いや、でも、しかし……ですね……」
「このボクが、イイって言ってるんだ。それとも、現場を離れたボクには、そんな発言権はナイって?」
事務所の人は、黙り込んでしまった。
このにいちゃん、このエラそうな事務所のおっちゃんよりも、立場が上なんか?
「ここで結婚させてやんなかったら、逆に事務所のイメージ悪くなっちゃうと思うよ? まぁ、ボクは事務所がどうなったって、知ったこっちゃナイけど」
若いにいちゃんは、アメリカ人のように両手を広げて肩をすくめた。
「なんだったら、万が一のことがあったらボクが全責任を取ってあげるよ。中川と違って、ボクにはそれだけの力があるし?」
今度はおどけた調子で、若いにいちゃんは中川クンの方に視線を投げた。
中川クンは、苦笑い。
「さぁ、どうする? 結婚を認めてやんないって言うなら、いまココでボクが『Hinata』をまるごと買い取って独立してやってもいいケド?」
若いにいちゃんは、事務所の人を挑発するように笑った。
「……わかりました。高橋の結婚を……認めます」
それだけ言い残して、事務所の人は去っていった。
『Hinata』の3人が、若いにいちゃんのところに集まってきた。
昔からよく知っている、という感じ。
高橋クンが、ひたすら若いにいちゃんに頭を下げる。
……このにいちゃん、何者やねん?
後に、高橋クンにその『若いにいちゃん』について聞いてみたんやけど。
「あぁ……彼は、ちょっと……ワケありなんですけど。企業秘密な人で」
「企業秘密?」
「えぇ、うちの事務所の……まぁ、すごい人です」
と、言葉を濁していた。
まぁ、何はともあれ。
その、『若いにいちゃん』の出現によって、高橋クンと道坂サンの結婚が無事、認められることになったわけです。
「――どういうことですか」
高橋クンと道坂サンの事務所関係者が、わざわざスタジオに乗り込んできた。
「……すみませんでした。全部、僕の責任です」
高橋クンが、深く頭を下げた。
「あんたね、高橋に付きまとわないでくださいよ。何年か前にも、あったでしょう? あんた、またうちの大事な商品を潰す気か!?」
高橋クンの事務所の人が、道坂サンに詰め寄った。
「本人を前にして『商品』なんて言い方、ちょっとどうかと思いますけど」
見かねて、ボクが口を挟んだ。
「何年か前って、あれでしょう? ウチの番組で高橋クンがプールに落ちて、熱出したやつ。あれ、ただの偶然の事故ですやん。道坂サンが故意にしたこととちゃいますよ」
ボクが援護すると、高橋クンはそれに続けて言った。
「そうですよ。それに、僕はすぐに熱も下がって、その後の仕事にはなんの影響もなかったじゃないですか」
「しかしね……」
「だいたい、彼女が僕に付きまとってるんじゃありません。僕が、彼女に付きまとってるんです」
高橋クンは、事務所の人をまっすぐ見て言った。
「お互いの仕事には絶対に悪影響を与えません。だから……お願いです。僕のわがままを聞いてください」
再び、高橋クンが深く頭を下げる。
「……そんなわがまま、聞けるわけないだろう!? おまえに、何年もの間、いくらかけてきたと思ってるんだ! この先、既に大きな仕事も決まって―――」
「もう、そのくらいでイイんじゃナイ?」
背後から、怒り狂う事務所の人の言葉をさえぎったのは……。
……おや? なんや、見たことない、若いにいちゃんや。
見たところ、20歳前後の……いや、もっと若いか?
かなり小柄で華奢な、なかなかのイケメンにいちゃん。
「あ、あなたは…………」
高橋クンの事務所の人の顔色が変わった。
『Hinata』の3人も、驚いた顔をしている。
若いにいちゃんは、ゆっくりと前に歩み出た。
「高橋がさ、『仕事に悪影響を与えない』って言い切ってるんだ。結婚ぐらい、させてやったら?」
「いや、でも、しかし……ですね……」
「このボクが、イイって言ってるんだ。それとも、現場を離れたボクには、そんな発言権はナイって?」
事務所の人は、黙り込んでしまった。
このにいちゃん、このエラそうな事務所のおっちゃんよりも、立場が上なんか?
「ここで結婚させてやんなかったら、逆に事務所のイメージ悪くなっちゃうと思うよ? まぁ、ボクは事務所がどうなったって、知ったこっちゃナイけど」
若いにいちゃんは、アメリカ人のように両手を広げて肩をすくめた。
「なんだったら、万が一のことがあったらボクが全責任を取ってあげるよ。中川と違って、ボクにはそれだけの力があるし?」
今度はおどけた調子で、若いにいちゃんは中川クンの方に視線を投げた。
中川クンは、苦笑い。
「さぁ、どうする? 結婚を認めてやんないって言うなら、いまココでボクが『Hinata』をまるごと買い取って独立してやってもいいケド?」
若いにいちゃんは、事務所の人を挑発するように笑った。
「……わかりました。高橋の結婚を……認めます」
それだけ言い残して、事務所の人は去っていった。
『Hinata』の3人が、若いにいちゃんのところに集まってきた。
昔からよく知っている、という感じ。
高橋クンが、ひたすら若いにいちゃんに頭を下げる。
……このにいちゃん、何者やねん?
後に、高橋クンにその『若いにいちゃん』について聞いてみたんやけど。
「あぁ……彼は、ちょっと……ワケありなんですけど。企業秘密な人で」
「企業秘密?」
「えぇ、うちの事務所の……まぁ、すごい人です」
と、言葉を濁していた。
まぁ、何はともあれ。
その、『若いにいちゃん』の出現によって、高橋クンと道坂サンの結婚が無事、認められることになったわけです。